何も思い通りにいかないし、誰もがいつの間にか諦めることに慣れてしまっていた──それでももう一度、前を向こう。大切な人たちと触れ合いながら、明るい未来に向かって生きていきたいという願いは、やがて現実となって瞬きはじめるだろう。
「何かあったら」と、漠然とした不安が蔓延していた2020年。秋ごろにはマスク、ソーシャルディスタンス、オンラインといった新たな生活様式が“日常”に変化しつつあった。新型コロナウィルスの感染拡大により行動が制限され、友人同士と集まることも難しく、やりたかったこと・行きたかったことが叶わない現実に、慣れていく自分。どこにもぶつけられない怒りを抱えながら、苦しい日々が続いた。しかしそれは、「世界中の誰もが」同じ状況。自然と社会の速度は緩やかになり、自分や家族と対峙する静かな時間を過ごしながら「これまで」と「これから」を考えるようになった。そんな、散歩するようなゆっくりとした時間が訪れたことは“いいこと”だったのかもしれない。
同じ空の下、世代によってどのような感情を抱え、今を生きているのだろうか。本作では10代から40代まで世代も職業も異なる人々が過ごした、2020年の「しし座流星群」が降った一夜を映す。何気ない日常風景には、しんどかったことも、いいことも切り取られる。そこに重ねられたロマンチックな現象は光となり、肩を重ねる主人公たちを見て「未来はきっといいことになる」と願わずにはいられない。希望を忘れない、私たちが懸命に生きる”現代”を記録した新しい作品となった。
監督を務めるのは、直木賞作家・道尾秀介原案の映画『名前』(2018)や『13月の女の子』(2020)、『僕たちは変わらない朝を迎える』(2021)など、若手俳優や群像劇の演出に定評のある戸田彬弘。自身も、コロナで2度劇団公演が中止となり、苦しい想いをした部分が反映される。脚本は、香取慎吾主演ドラマ『誰かが、見ている』で三谷幸喜氏との共作に抜擢されたガクカワサキが担当。SNSで脚本を募集した際、私たちの生活の延長に主人公たちが存在するような筆力に監督は信頼を寄せたという。
群像劇の主人公となる若者たちは、映画『あゝ、荒野』(17/岸善幸)や『由宇子の天秤』(20/春本雄二郎)など話題作に続々出演する前原滉。映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16/岩井俊二)、映画『君の膵臓をたべたい』(17/月川翔)など名だたる監督作品に出演を続ける大友花恋。そのほかの出演者には、中島歩、柳ゆり菜、篠田諒、めがね、山時聡真、佐々木悠華、アベラヒデノブ、高橋努など監督が信頼する若手からベテランまで、様々な俳優が名を連ね、キャラクターと近い実体験を持った役者たちが、リアリティのある息遣いを見事に演じた。
Comment
亮介役を演じさせて頂きました。前原滉です。
大変な世の中になっても、マスクで顔が、表情が見えなくても本当に大切なことは変わらない。当たり前のことだけど、忘れがちなこと。
そんな事を改めて思い出させてくれる群像劇になっていると思います。
色んなパートがあり、出てくる人物皆んなが主役の映画です。
皆さん本当に素敵です!是非劇場に足を運んで頂きたいです。